自動運転車と保険

産經新聞社 編集委員 小林隆太郎  

 

  最近、次世代自動車として「自動運転車」の開発が進んでいるという話を聞く。自動 車保険はすでに成熟市場になっているが、クルマ社会の変化と自動車技術の進歩が自動 車保険のあり方を変えていく時代に入ったようにも見える。

   わが国の自動車保険市場は、経済成長、クルマ社会の進展に伴って順調に拡大してき た。損害保険会社の「宝の商品」でもあった。それだけに、競争は徐々に激しくなり、 いまではテレビCMで自動車保険の売り込みが花盛りとなっている。

   そこへかねて開発中だった自動運転車がまもなく実用化段階を迎えるというニュース が広がってきた。自動車は、ハンドルやアクセル、ブレーキなどを操作して目的地まで スムースに移動するが、そうした操作を人間ではなく、センサーやカメラからから得た 情報をもとにAI(人工知能)が自ら判断して行うのが自動運転車だ。米国ではこ のほどグーグルが試作車を公開し、2020年ごろの実用化を目指している。

   日本の自動車メーカーも競って開発に力を入れており、これを支援する国土交通省も 実用化に向けた道路・交通網の環境整備を進めている。国交省は、自動車事故は「発見 の遅れ」「判断の誤り」「操作の誤り」など人為的なミスが90%以上を占めるとし、 それを自動運転によって回避することで交通事故を大幅に削減できると期待している。   

  さて、そうなると自動車保険はどうなるのか。保有者は保険に加入しなくてもよいこ とにならないか。事故の心配がなくなるのだから、無理して自動車保険に加入しなくて もよい。それでも事故・故障が起きたらメーカー責任となり、賠償に対応するのか。搭 乗者の責任は問われない。自動車保険のコンセプトはまったく違ったものになる。技術 の進歩が保険ビジネスのモデル変化を引き起こすいい例になるかもしれない。

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