加速する少子化・人口減少と保険業の役割

慶應義塾大学商学部講師 内藤和美

 

 

 日本において少子化・人口減少が加速しています。2023年3月1日付日本経済新聞朝刊には「出生急減80万人割れ 推計より11年早く」という衝撃的な見出しがありました。厚生労働省が公表した人口動態統計速報(2022年1~12月速報の累計)に基づく記事で、同速報値によれば、2022年の出生数は79万9,728人と過去最少、同年の死亡数は158万2,033人で過去最多を更新し、少子化・人口減少の加速が示されています。

 

 

 また、厚生労働省の人口動態統計(確定数)の概況によれば、合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に産む子どもの平均数)は、2020年は1.33、2021年には1.30と減少傾向にあり、日本の人口置き換え水準(人口を一定水準で維持するために必要な合計特殊出生率)である2.07を大きく下回る状況となっています。

 

 

 日本の人口構成においてボリュームゾーンである「団塊ジュニア」世代が出産適齢期を過ぎ、若年世代のボリュームは減るため、仮に出生率が横ばいでも出生数は減る構造要因となっているとの指摘があります。コロナ禍の影響から出会いの機会が減少したことで結婚数がコロナ前の水準に戻っておらず、かつ、社会・経済活動の正常化の遅れによって若年世代の将来不安も高まっており、「持ちたい子どもの数」が減っているという指摘もあります。

 

 

 少子化による人口減少は、生産年齢人口の減少による労働力人口の減少をもたらし、経済成長率の低下や、現役世代が引退世代を支える社会保障制度の持続可能性を困難にするなどの社会的問題を生じさせます。一方で、社会保障制度を補完する機能を有する民間保険(例えば、医療・介護などの第三分野の保険)へのニーズはより高まることから、個々のリスクやニーズに応じた革新的な保険商品・サービスを提供していくことが一層求められるものと考えられます。

 

 

 保険業界では、デジタル化の進展に伴って保険のパーソナル化が進み、顧客の動的リスクを分析することで、個々人にテーラーメイドな保障を提供することが可能になる一方、保険の利用可能性・購入可能性を確保しつつ、保障サービスの拡充につながる仕組みを探求するべきである、との指摘がなされています。

 

 

 そこで、日本において、保険をより広く国民に普及させる方法の1つとして、マイクロインシュアランスの普及可能性を検討する必要があると考えられます。マイクロインシュアランスとは、「発展途上国などにおいて十分な社会保障を受けることができていなかったり、リスクへの備えが不十分な低所得層を対象に低価格で提供される保険のこと」であり、これまで主に、発展途上国のプロテクション・ギャップの解消に寄与してきました。今後は、日本でも社会保障制度を補完する民間保険の機能をより発揮するために、デジタル技術も活用しつつ、保険料が低廉で保険カバーも小さい、マイクロインシュアランスを普及させていくことが保険業界に期待されるものと思います。

 

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