「保険も自助・共助・公助の時代へ」

産經新聞社 編集委員 小林 隆太郎

 

 

  今度の衆議院選挙では社会保障改革も大きな問題になるはずだったが、そうはならなかった。実際はどの党も「話題」にしたくなかったからだろう。要は、多くの党が「国民皆保険制度を守る」という基本的な考え方なので、大きな論議になりにくかった。しかし、今後高齢者の増加で国民医療費などの増加は加速していくのが確実だ。ならば、公費負担の増額や保険料のアップで対応していくのか、はたまた保険給付の範囲を絞り、抑制的な制度に変えていくのか-そのどちらに軸足を置くのかを決めなければ改革の道筋は見えない。

  また、公的保険の種類別に切り込んでいくことも必要だろう。新政権は、生産年齢人口(15-60歳)減少など世代間の問題を含め「入るを量りて出ずるを制する」という〝原則〟に立ち戻って議論をしなくてはいけない。選挙では、年金・保険給付の維持を望む高齢者、シニア層の「票」を意識すれば改革論議は避けて通りたいのが本音だろう。なにしろ有権者のおよそ4分の1が高齢者だ。かといってこのままでは後世代の負担は重くなっていく一方だが、若い世代に向けて厳しい現実を示すことは、はばかれる。しかし選挙後、新政権にとってはけしてゆるがせにはできないテーマだ。

  公的保険はいま、大きな曲がり角にある。東日本大震災でわれわれは学んだように「防災」に自助・共助・公助がある。自らの身を守るという意味では保険も同じだろう。つまり「保険」にも自助・共助・公助のバランスのとれた対応が必要になる。その意味で「自助」に当たる民間保険会社の社会的な役割はますます大きくなる。(了)

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