公平性と相互扶助

損害保険ジャパン 新倉達郎

 

 

 この10月に大手損害保険会社は自動車保険の等級制度改定を行いました。

 ポイントはこれまで一本であった等級による割増引係数を、「事故無係数」と「事故有係数」に細分化し、3等級ダウンの事故があった場合は3年間「事故有係数」を適用するとしたものです。

 つまりこの制度改定により、一度事故を起こすと3年間は改定前より高い保険料を払う必要があります。小損害の場合は、支払いを受けた保険金の額より、3年間の保険料のアップの金額のほうが高くなってしまうケースも出てきます。

 今回の改訂の主な趣旨は「公平性」です。これまでは同じ等級であっても、前年契約で「事故がなかった契約者」よりも「事故があった契約者」のリスクの実態が高いため、「事故があった契約者」の保険料の一部を「事故がなかった契約者」が肩代わりしている実態にありました。この契約者間の不公平を改善したものが今回の改訂です。

 ところで保険の仕組みはよく「相互扶助」という言葉で表現されます。「相互扶助」とは文字通りお互いに助けあうということであり、広い意味では肩代わりともいえます。

 「公平性」も確かに必要ではありますが、「相互扶助」の精神も大切にしなければなりません。保険設計はこのバランスであると改めて考えさせられます。

以上

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