SDGsと学会設立70周年

慶應義塾保険学会理事長
堀田一吉

 

 新年あけましておめでとうございます。一昨年に発生した新型コロナのパンデミックは、2年を経っても未だ完全に終息するに至っておらず、昨年も、保険学会の研究会は、全てオンラインの開催となってしまいましたが、今年こそは、以前のような対面開催に戻れることを願っているところです。
 

 世界中でパンデミックリスクに関心が奪われている中で、地球規模で発生する自然災害の多発化は、人類の存続を脅かすリスクとして、一段と深刻さを増しています。こうした認識を背景に、近年、SDGs(持続可能な開発目標)への人々や企業の関心が高まっています。地球温暖化のみならず、深刻な海洋汚染、砂漠化による農作物被害、後進国での飢餓や貧困など、生活環境に関わる持続可能性について危機感が高まる中で、あらゆる企業は、地球や社会との共生を図り、社会的責任を意識した企業経営が求められています。
 

 保険業界は、支払保険金の増大をはじめ、気候変動リスクに様々な形で影響を受けると同時に、その問題への対策に非常に大きな影響力を持っています。保険事業の特性から、リスクの引き受けを通じて、再生可能エネルギー事業の拡充支援や脱炭素を行う企業への選別投資など、ESG(環境・社会・企業統治)を意識した取り組みも積極的に推進しています。
 

 同様に、SDGsのテーマでもある発展途上国の貧困問題についても、保険業界では国際的協力が進められています。2015年に、G7諸国が資金拠出して設立されたInsuResilienceは、世界銀行グループや保険開発フォーラム(IDF)、世界食糧計画(WFP)などがパートナーとして参加しており、貧困者を対象とした保険プログラムが設計されています。いまや保険業には、地球的視野に立って、保険事業を通じたプロテクションギャップの縮小を図ることも、社会的責任として期待されているわけです。保険学会としても、こうした問題を議論する場を設けて、広く問題意識を共有しながらその成果を発信することで、われわれの存在意義を示さなければなりません。
 

 本年、慶應義塾保険学会は、設立70年の節目を迎えます。1952(昭和27)年7月に銀座交詢社で設立総会が開催されて以来、実に多くの方々からのご支援とご理解を得て、今日を迎えることができました。これまでご尽力いただいた方々への深い感謝の念を抱きつつ、引き続き、新たな目標に向かって進んでまいりたいと思います。
 

 皆様、今年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

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