保険業界の「働き方改革」とAI時代

慶應義塾保険学会理事長

   堀田一吉

 

 

 新年あけましておめでとうございます。会員各位のおかげをもちまして、昨年も、5回の研究会、学生研究報告会、「保険研究」69集発行など、充実した学会活動を行うことができました。改めて厚く御礼を申し上げます。

 

 さて、安倍内閣が発足してはや5年、次々と目先を変えた政治方針が提示され、あまり成果もないまま、国民生活は翻弄され疲弊しているというのが実感ではないでしょうか。そうした中で、現在、最も注目を集めているのが「働き方改革」でしょう。これは、一人一人の意思や能力、状況に応じて、柔軟で多様な働き方を選択できる社会の実現を目指そうとするものです。

 

 人口減少社会が進み、労働人口が減少する中で、一人一人の労働者が生産性を高めなければ、現在の生活水準を維持することは困難です。また、長時間労働が常態化し、また非正規雇用が4割近くに達する中で、ワークライフバランスを取り戻さなければ、少子化はさらに進み、また、労働者の将来不安は深まるばかりです。「働き方改革」は、われわれの労働観やライフスタイルのあり方を根本から問い直そうという試みです。

 

 こうした中で、保険業界では、AI(人工知能)を取り入れた経営改革がますます活発になってきました。インシュアテックが商品開発やアンダーライティング、損害査定など、さまざまな領域で、保険事業を大きく変えようとしています。これは、AI技術を最大限に活用しつつ事務作業の効率化を図り、同時に、限られた人材を最適な形で配置をすることで、経営効率を高めようという意図の表れと見られます。

 

 ただ確認しておきたいことは、AI技術は、あくまでも手段であり、目的は、人々の生活福祉の向上にあるということです。われわれは、AI技術の導入によって働き方が変わり、豊かさを享受できるような、AI時代にふさわしい新しいライフスタイルを追求するべきだと思います。これこそが、保険業界に求められる「働き方改革」だといえるでしょう。

 

 慶應義塾保険学会は、これまでも産学協同を基本理念に活動を続けてきましたが、まさに、こうした現代社会の課題を取り上げて、学会の場を通じて議論を交わし、積極的な政策提言を行うことが、ますます求められるのではないかと考えています。

 

 本年も、会員各位の相変わらぬご支援ならびにご協力をいただきますように、お願い申し上げます。

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