明治安田生命保険相互会社
営業企画部 シニアFPコンサルタント 山本英生
生命保険は、人が死亡した時に保険金を受け取ることができる商品ですので、「そうぞく」には非常に有効になることは、よくご理解いただいていると思います。私はセミナーなどでは「そうぞくはひらがなで考えましょう。」と申し上げます。それは、生命保険は相続税の対策にも相続をめぐっての争議(「争族」と表記)対策にも有効であるから、この両面で考えてほしいという思いからです。
相続税対策として一番に浮かぶのは、死亡保険金は非課税ということだと思います。しかし、生命保険は契約者・被保険者・死亡保険金受取人の関係で課税が相違しますので、まずは生命保険の契約者・被保険者・死亡保険金受取人の確認が大切なことをお伝えします。
契約者=被保険者(保険に対象の方)が本人であれば、死亡保険金受取人が被保険者の法定相続人の場合、500万円に法定相続人の数を乗じた金額が非課税になります(相続税法第12条)。平成27年1月の相続税改正での基礎控除引下げで相続税を納める方が増えていますので、この非課税枠はしっかりとご活用いただきたい点になります。
もうひとつ、相続財産になる生命保険が、契約者≠被保険者で契約者死亡の場合です。この生命保険はその時点の解約返戻金相当額が相続財産として加えられます(相続税財産評価基本通達214)。平成30年1月からは、この契約者変更について、生命保険会社は支払調書を国税庁に提出することになりますので相続時には漏れがないように注意することが必要です。
相続税対策での贈与の活用もさまざまな方法をお聞きします。財産を贈与することで相続財産を移転できますので相続税対策としては有効です。この贈与された財産の使い道の一つとして生命保険を活用することも多くなっています。もちろん、贈与のさまざまなルールは守ることが必要ですが、贈与を受けた方が、生命保険を活用することで、自分の老後生活資金や介護資金の準備、相続税の納税資金準備など、さまざまなニーズに応えることが可能になります。
もうひとつの生命保険活用の大きなポイントが、「争族」対策です。生命保険の大きな特徴として、生命保険の死亡保険金は民法上の相続財産ではなく、受取人固有の財産として死亡保険金受取人の個人財産になるという点があります。そのため、遺産分割協議の対象にもならない、相続放棄しても受け取り可能など、さまざまなメリットがあります。さらに、保険金はご請求が間違いなどなければ一般的に5営業日以内で受取りが可能ですので、当面の生活費などにも活用することもできます。
さらに、相続財産の中で不動産や事業用資産など分割が厳しい資産が多い場合、現金分割・共有名義などの方法もありますが、相続を受け取った人にとって必要な財産であり売ることもできず困ってしまうケースも多いようです。こういった際に資産を受け取った方が受け取っていない方に自分の財産からお支払する代償交付金に死亡保険金を活用することも可能になります(特別受益にあたらないという最高裁の判例もあります)。
実際、お客さまは、「そうぞく」が発生してから、生命保険のことをもっと意識して加入しておくべきだったという方が多くいらっしゃいます。私は、この仕事を通して、ひとりでも多くの方が、「そうぞく」が発生した際には、ご自身が思った通りのそうぞく「想続」となるように「生命保険」活用のお手伝いさせていただきたいと思っています。
以上