女子学生就活手帳

慶應義塾保険学会

常務理事 上田進朗

 

 

本欄『保険人萬来』でも就職活動をする学生について話題となっているが、今年の保険業界の就活戦線も峠を越したらしい。10月1日の正式内定に向けて、多くの採用企業の担当者や就活学生かその準備に取り掛かっているとも聞いている。未だ決着をつけていない学生諸君は、もうひと踏ん張りというところであろう、健闘を祈っている。

 

少し前になるが、大阪の名門女子大のK先生のゼミにゲストスピーカーとして参加した時に、かつて勤務していた会社のインターシップ(就業体験)に参加したという学生がいたので、その感想と入社試験に応募したくなったかどうか聞いてみた。近年は、同社を含め保険業界がダイバーシティに積極的に取り組み、なかでも女性社員の能力向上、活躍機会の拡大に努めているのを良く知っていたからだ。

 

もともとは卒業後の第一志望が「専業主婦」だったが、就職した場合と専業主婦との生涯収入の差を先生に指摘されて考え直し、就職活動を始めたというこの学生は、率直にこう感想を述べた。『会社では、女性の能力開発の機会が整備され、幹部社員として非常に多くの女性が活躍していることは良く理解できました。しかし、その方たちの大多数が独身だということも判りました。私はそんな会社に入社したくありません。』

 

これには、「でもネ、私を含めて同期入社者の半数以上は社内結婚ですよ。」とピント外れの反論しかできなかったことを覚えている。

 

近い将来、女子学生の就活ハンドブックには、「女性幹部社員の既婚率」なる項目が設置され、この項目の低い企業は「ブラック企業」に分類される日が来るかも知れない。いや既に、この学生の手帳にはこの項目が立ち上がっているのだろう。

 

この話を、半ば冗談のつもりで近年入社した女性の後輩諸君に話したら、『先輩は甘い。私たちの間では仕事の忙しさにかまけてバツイチ(離婚)になる先輩のうわさが流れている。バツイチ率も公表すべきです』と言われてしまった。現代女子学生の就活感性は企業の思惑のはるか先を行っている。これには採用担当者は本当にたいへんだと思った。

 

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