「これからの業界人のみなさまへ」

明治安田生命保険相互会社
執行役員人事部長 永島 英器

 

 

 人事部長という仕事柄、学生の方を含めて将来の生命保険業界を支える若いみなさんとお話しする機会が多くあります。業界に関心を持ったきっかけをうかがうと十人十色の答えが返ってきますが、私自身は大学の授業がきっかけでした。

 

 「国家とは何か」「法律をたてに身分を拘束したり私有財産を奪ったりと、一見理不尽な存在である国家が正当化される根拠は何か」という授業でした。市民と国家との間の黙示的・擬制的な契約を根拠にしたルソーの「契約説」については、中学の社会科で習った記憶がよみがえりましたが、契約説を補完する「保険説」を知ったのは、その授業が初めてでした。

 

 「国家は税金という名前で保険料を徴収するかわりに、外国による侵略や自然災害などで市民が困ったときに救いの手を差し伸べる。ルソーのいう契約は保険契約にほかならない」という学説を学んだときに、保険会社と国家にしか果たせない崇高な使命があることを感じたものです。大きな国家を標榜する北欧の福祉国家などでは民間保険会社の存在感が小さく、逆に小さな国家では民間保険会社の存在感が大きいという現実も、保険説を裏付けている気がいたしました。

 

 国家財政が厳しく少子高齢化が進むわが国で、今後、国家の機能が大きくなることは考えにくいことです。こうした現実や家族愛をお一人おひとりに説いて回り、(ルソーの唱える擬制的な契約とは違って)ご納得づくで、目に見える保険証券を1枚1枚紡ぎ出していくことで、社会のセーフティーネットを守っていく。このことは、将来の子どもたちの世代のために私たちが果たさねばならない大切な使命であると考えます。

 

 他方、私は、営業所長、支社長の経験のなかで、必ずしも経済的には豊かとはいえないお客さまや営業職員が必死の思いで生きている姿を目のあたりにし、心の豊かさを学び、身をもって保険の意義を体感するとともに、1対1のひととひととの出逢いから生まれる一瞬の感謝・感動に何度も涙いたしました。

 

 縁あって生命保険会社に勤めたおかげで、頭で考える抽象的な意味での「使命感」と、ひととひととの出逢いから生まれるハートで感じる「感動」。これらこそが「幸せ」であるとの確信を持つことができました。

 

 ひとは問われている存在と、ビクトール・フランクルは言います。若いみなさんが、これからの長い人生のなかで、自分なりの答えを見つけられますよう、そして出来うれば、その答えをお仕事のなかで見つけられますよう、心から祈念しております。

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