“ユビキタス生活設計のすゝめ” -“e-ライフプランニング”の公表を契機に-

公益財団法人 生命保険文化センター

代表理事  鈴木 勝康

 

 

  “ユビキタス(ubiquitous)”とはラテン語を語源とする英単語(形容詞)で『どこにでも存在する~』の意である。また、“生活設計”は、自らのライフステージに立って将来を見据え、生活・経済環境を予想し、いかに生きるべきかを思考し設計・計画する実践的で知的な営みということができる。

 

   生活設計の重要性は教育の現場から指摘されて久しいし、近年ではリーマンショック後、金融リテラシー向上あるいは金融ケイパビリティ(主に英米での表現)向上の視点から論を俟たない。誰しも人生を送る上で、ある時点のライフステージに応じ漠然か具体的かを問わず、夢や目標を念頭に将来の生活を想定する。ただし、生活設計の要諦は、人生や生活の“落とし穴(pitfalls)”やリスク(risk:予期せぬ出来事、生老病死、予想外の制度変更等)を認識し、想定し、予めそれに備えて経済的にも、場合によっては法的にも対応策を講じ、より安心かつ豊かな人生を送ることにある。もちろん生命保険も大数法則に立脚した生活保障のための人類の知恵であり経済的対応手段のひとつであるが、生活設計に当たって何よりも大切なことは、将来にわたる生活につき出来るだけ具体的な計画や工程表を作成しリスクを“見える化”することである。そのためのツールが鍵となる。人生もまた時に奇かもしれない。その中でリスクを数字、グラフあるいは図表に表して炙り出したいものである。

 

   リーマンショックの震源となったサブプライム問題に顧み、米国のオバマ大統領は金融ケイパビリティに関する大統領諮問委員会を設置し3年の審議を経て最終報告を公表(2013.1.29)した。金融ケイパビリティの向上は『家庭、学校、職場、コミュニティ』に長い目で浸透させることが要請される。翻って思いを致せば“ユビキタス”(居酒屋でも喫茶店でも)様々な場、ライフステージで生活設計へ関心が及んだ時、即座に利用できるツールがあれば金融ケイパビリティは格段に向上する。

 

   生命保険文化センターは来年1月設立40周年を迎える。1976年の創設以来、生命保険や生活保障に関する調査を実施するとともに公的社会保障制度や各種統計数値を踏まえ一般の方々が利用可能な生活設計に資するツールを開発してきた。今年3月これまでの“手書き”の生活設計ツール(資金収支表等のシート)を土台に、パソコンやスマートフォンから接続可能なWebシミュレ-ションツ-ル“e-ライフプランニング”を開発し公表した。安定したインターネット環境の下で、生命保険文化センターのホームページにアクセスし、トップページ右上のバナーをクリックすれば、“手書きをせずに”家計収支の将来推移を作成できる。この生活設計シミュレーションツールには至らない点も多々あると推察するが、是非長い目でみてご活用いただき、ユビキタス生活設計が広く浸透して多くの方々が安心で豊かな生活を送るための一助となればと切に願うものである。 (元内閣府参与)

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