慶應義塾保険学会 理事長
堀田一吉
新年明けましておめでとうございます。昨年も、皆様のおかげで、滞りなく学会活動を行うことができました。改めて、平素より会員の皆様よりいただいているご支援ご協力に感謝を申し上げます。
さて本年10月には、日本保険学会創立75周年記念大会が、慶應義塾大学三田キャンパスにおいて開催されます。その記念事業の目玉として、「福澤諭吉と日本の保険業」と題する展示企画を立案しています。この企画は、慶應義塾保険学会と慶應義塾図書館との共催という形で、現在、企画委員会を設置して具体的な方針を議論していただいているところです。開催期間は、9月中旬から10月末までの一ヶ月半の間で、一般の方にも公開できる形にしたいと考えています。
わが国に西欧の保険事情を初めて紹介した福澤諭吉の功績を讃えて、「西洋旅案内」「西洋事情」「民間経済録」など、福澤が著した保険について述べた書物を一同に開陳することに加えて、慶應義塾所蔵の保険関連の貴重な図書や資料を集めて展示することを計画しています。
また、福澤諭吉から薫陶を受け、近代保険業の成立に尽力された多くの福澤門下生の業績にも目を向けたいと思います。その一人で明治生命の創立者でもある阿部泰蔵は、保険関連の膨大な書物を寄贈され、それは慶應義塾図書館に「阿部文庫」として保蔵されていますが、この機会に可能な限り、洗い出しを試みたいと思います。年初からは、福澤研究センターのスタッフや慶應義塾図書館の資料室の方々のご協力をいただきながら、内容を煮詰めてまいりたいと考えています。今回の企画は、おそらく慶應義塾関係者はもとより保険業界内外の方々にも、多くの関心を集めるのではないかと期待しています。
福澤諭吉は、民間経済録(第二篇)の中で、「古人云く、恒の産なき者は恒の心なしと。世の災害は恒の心なき者より起るを常とす。保険は人をして恒の産を失わしめざるの法にして、又随て恒の産を作らしむるの方便なり。」と述べていますが、わが国の順調な経済発展は、まさに保険業の貢献によるところ多大なものがあります。今回の企画を通じて、わが国における保険業の発展と慶應義塾の繋がりを振り返りつつ、福澤諭吉の精神を現代に受け継ぎつつ、将来へ伝えようとする当学会の社会的使命を再認識したいと思います。
皆様のご協力を得て、有意義な企画となるように努めてまいりたいと存じますので、何卒ご支援頂きますようにお願い申し上げます。本年もどうぞよろしくお願い致します。