新宿西口での防災活動 ~超高層ビル・テナント事業者による防災活動の現状と課題~

新宿駅周辺防災協議会西口部会事務局
川瀬 俊治

 

 正式には、「新宿駅周辺防災対策協議会西口地域部会」の事務局ということになる。

損保会社で営業推進や商品を経験し、RMの関連会社にお世話になり、退職後もいつの間にか、この任意団体のお手伝いをしてきた。
 これは新宿区危機管理課が主体になっており、「東口」が商業施設による防災活動の部会であるのに対して、「西口」は超高層テナント事業者の防災活動推進のためのものである。実態的には工学院大学の久田・村上両先生の指導の下、駅前滞留者対策訓練の頃から数えるとほぼ十年に達しようとしている。
 新宿区は三二万人の住民人口だが、昼間は勤務者・買物客等を含めると二・五倍になる。
まして、新宿は世界一乗降客の多い駅だ。人口の集積度では、他に類を見ない「地域」でもある。
 考えてみれば、会社勤めをする人々が大地震に遭う時間帯の確率は、平日の在社時間を分子にすれば、ほぼ四分に過ぎない。しかし、この地域の垂直的な人口密度を考慮すると、その対策の重要度は非常に大きい。
ところが、どこの基礎自治体の防災計画でも、基本的に昼間人口を対象にしていない。大規模な建物や事業体の防災対策は、消防法による対策と訓練ということになっている。
しかし、事業者はテナントの立場では、その対策自体にほとんど関心がない。自衛消防隊による法定訓練も、なるべく人的負担を少なくしたいというのが実状だ。BCPに関心があっても、それは基本的に自社のために、自社で完結するもので、地域という考え方は高層ビルの事業者には馴染まないからか。
保険との関連がありそうでないのが、防災や減災の取り組みだ。両者とも事前の契約締結や、防災・減災の取り組みがなければ、結果としての経済的な補填も、損害の軽減もできない。保険料の支出と、防災・減災の事前の取り組みや訓練への参加は、災害対策の代償として似ているとも言えよう。
しかし、決定的な差異は当事者間の関係だ。保険であれば、保険者と被保険者の関係で分かりやすいが、防災・減災では、結果としてすべての人々が被害者になる蓋然性があるが、事前の負担(防災対策)を、行政だけのマターと考えてはいないか。自助と共助とう言葉は、実際の中身があってこそで、残念ながら企業のマインドには、まだ少ししか伝わっていない。

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