生まれた時が悪いのか。それとも俺が悪いのか。

慶應義塾保険学会 常務理事   上田進朗

 

 

『生まれた時が悪いのか。それとも俺が・・・・』昔流行った歌謡曲のようなテーマで議論になったのは、『変額保険』についてだった。

例によって気の置けない同期の仲間の飲み会の席上に、最近の『変額保険』の運用利回り表が持ち込まれ、最近はプラスを維持しているとの話から、発売当初の頃の話に盛り上がったのだ。

・「お前たちが、あんな売り方するから悪者になったんだ。」と言い出したのは、当時運用を担当した特別勘定部の責任者だった男だ。

・「確か、0パーセント、4.5パーセント、9パーセントの運用実績を示し、きちんと運用リスクを説明する設計書だったよね。」と当時販売企画部門にいた男が言う。

・「現場では二ケタ利回りは確実だという雰囲気で、銀行に借金させて一時払い変額保険を購入するプランまで現れた。」と元営業所長が回想する。

・「俺の所に、二ケタで回りますよねと、言ってきた販売担当者がいた。」「相当なプレッシャーだったぞ。」「だからというわけではないが、確かに『無理目のリスク』も挑戦的に取った。」と元運用担当者も続ける。

・「元々は『変額保険』はインフレに弱いとされる生命保険の対応策として生まれたものだよ。」と元商品開発担当者が冷静に解説した。

それが、よくも悪くも市場では『ザ・セイホ』の運用商品として認識されてしまい。その後の『バブル崩壊』を経て、すっかり『悪者商品』とされてしまったことは、全員が認識していた。

悪評嘖々たる中、『先を見越して耐え抜き』継続したか、『解約するに元本割れが酷すぎて』できなかったかは別にして、現在継続されている変額保険はそれなりにお役にたち、運用もプラスに回っているとのこと。『保険は継続が大事』とはよく言ったものだ。

『販売政策責任論』『運用政策責任論』、それぞれ言い合いながら酒が進み、結局『生まれた時が悪かった。』という、特別勘定運用部門で現在も奮闘している現役諸君には、きわめて不謹慎な結論になってお開きとなった。

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