一家にひとつは「個人賠償責任保険」

ファイナンシャル・プランナー 

竹下 さくら

 

 私の職業は「FP(ファイナンシャルプランナー)」で、ひとことで言えば、お金のよろず相談のような仕事をしています。たとえば、生命保険・損害保険の見直しや、住宅購入時のローンプランニング、老後資金設計といった事柄について、個別相談を受けたり、マネー誌などに執筆したり、新聞などから取材を受けたり、講演をすることで生計を立てています。

 そんな中、メディアからの取材で最近とりわけ多いのは、「個人賠償責任保険」に関わる案件です。個人が日常生活上で負った法律上の賠償責任を幅広くカバーするこの保険は、消費者やマスコミの人にとっては難しいらしく、わかりやすく解説してくれる専門家としてFPに取材しに見えるわけなのです。

 たとえば、今年(2014年)4月に控訴審判決が出た事例で、家族が目を離したすきに認知症の男性が電車にはねられ死亡した事故は、記憶に新しい人も多いのではないでしょうか。一審では、介護に携わった妻と長男に対して約720万円の支払いが命じられていました。それが、控訴審判決では妻のみに約360万円の支払いが命じられ、認知症の介護を担う人々に大きな波紋を呼びました。

 けれども、本人に責任がなく、家族の監督責任が問われ、家族が法律上の賠償責任を負った今回のようなケースでは、家族が被保険者の「個人賠償責任保険」でカバーできる可能性があることは、意外と知られていません。

 また、昨年(2013年)7月には、当時小学校5年生だった少年が乗った自転車と歩行者との衝突事故で、少年の母親に約9500万円の損害賠償責任が命じられました。被害に遭った女性は事故の影響で今も寝たきりで意識が戻らない状態が続いており、損害賠償額は高額が高額になったことはやむを得なかったようです。とはいえ、子を持つ多くの親に激震が走ったことは言うまでもありません。このような事態でも「個人賠償責任保険」の保険金支払いの対象となる可能性が高いです。というわけで、いま、この「個人賠償責任保険」に関心が高まっているのです。

 少し掘り下げていうと、この「個人賠償責任保険」は、世帯主が入れば、本人だけでなく、配偶者、本人および配偶者の同居の親族、別居の未婚の子までカバー範囲になるというパワフルな補償ながらも、保険料は月々200円前後と割安です。

 保険料が低廉なために「個人賠償責任保険」単体ではほとんど扱われていませんが、他の保険と組み合わせて販売されていたり、自動車保険や火災保険、傷害保険といった身近な損害保険に特約として付けることができます。一家にひとつ、入っておきたい保険と考えます。

ページの上部へ戻る