NPO法人日本リスクマネジャー&コンサルタント協会顧問 風間眞一
便利に使える携帯電話やスマートフォン(スマホ)。最近はスマホの普及が著しい。新機能が次々加わり、通話やメールに限らず幅広く使える情報ツールに進化している。ただ使い勝手が高まれば、それだけ価格も上昇する。そんなスマホの購入に若者でも買いやすい分割払い(クレジット)が活躍している。手持ち資金がなくてもスマホを手にできるのはいいが問題もある。
通常クレジット契約を結ぶ時、クレジット会社は法律で“顧客がきちんと支払えるかどうか”の調査が義務づけられている。当然、スマホの分割払いも同様だ。しかし10万円以下の商品は適用除外になるため、未成年者でも親の同意があればスマホをクレジット購入しやすい。
但しスマホの場合、毎月の通話料と端末の分割払い代金が合算して請求されるため、クレジットを使っているという認識に薄い顧客も多い。軽い気持ちから月々の支払いを滞納するとスマホを使えなくなるだけに止まらず、クレジット支払い遅延者と扱われてしまう。
3カ月以上遅れると記録は指定信用情報機関(CIC)に残り、完済しても5年間消えない。延滞情報はクレジット業界で共有されるため、将来クレジットカードを作ろうとしたり、自動車ローンを組もうとしても断られる恐れが出てくる。CICのデータでは、2010年12月に92万件だった携帯電話の延滞記録が今年1月には280万件にまで膨らんでいる。
昔は丸井など月賦百貨店でクレジットの利用に出会う若者が多かったが、今は携帯電話やスマホがそれに代わっている。契約内容を分かっていればいいが、理解が覚束ないと後で泣きを見ることにもなりかねない。支払いがは親で契約者が子というケースでは当然親の責任が大きくなる。
無論、携帯電話会社の責任は重い。店頭での詳しい説明や注意喚起は必須だが、そもそもクレジットの基礎知識に乏しいと何を言っても“右から左”となりかねない。根本的な解決にはクレジット業界の消費者啓発の強化はもとより、就学時からのクレジット教育の充実が不可欠となろう。
大切な「信用情報」にキズを付けないためにも、若者が社会に出る前にクレジットの正しい知識を身につけてもらうのが肝要だ。わが国ではかつて、割賦(=月賦)販売は“ゲップが出る”と嫌われた。学校でも“借金”や“クレジット”は遠ざけられ、クレジット教育の遅れにもつながった。今後もさまざまなクレジット契約が消費社会の一翼を担って行くとすれば、健全な利用のためのクレジット教育の推進は待ったなしである。