産經新聞社 編集委員 小林隆太郎
昨年起きて社会的にも話題になった「みずほ銀行の暴力団員融資事件」。いろいろ商売するにしても反社会的勢力との付き合いがかなり難しいことを考えさせられた。
反社会的勢力といっても「普通の市民の顔」をして社会と関わっているわけで、ちょっと見で見分けることは難しい。とくに金融機関などは広く一般市民と取引があり、なかなか見分けることはできない。
保険ではどうだろうか。契約者が暴力団とわかっていれば最初から契約はしないし、契約した後で暴力団員だと判明すれば、その時点で解約手続きをとるほかはない。と、そう簡単にいくかどうか。たとえば「自動車保険」の場合どうだろう。同保険に加入を拒否された組員が事故を起こしたらどうなるのだろう。問題は加害者(組員)ではなく、善良な市民である被害者が大変な迷惑を被るからだ。加害者が損害賠償の支払い能力がなく、任意保険である自動車保険に入っていなければ、被害者は泣き寝入りをするしかない。被害者は加害者を選べないのだ。
現代社会は、高度で複雑な仕組みにできあがっていて、その隅々まで反社勢力は浸透している。保険ビジネスは社会に深く根を張るシステムとなっているがゆえにこの問題への対応は難しい。自動車保険でいえば、暴力団員には運転免許を与えないとかの根本に迫る対応が必要だろう。だが、全社会的に反社勢力の問題を考えれば、単に反社勢力を切り捨てれば解決するというほど単純な問題ではない。(了)