保険業界における消費者教育

 損害保険労働組合連合会 

事務局次長 森 久之

 

 「消費者教育」という言葉をみなさんご存知でしょうか。近ごろ、新聞紙上などで取り上げられることから目にしたことがある方もいらっしゃることでしょう。この「消費者教育」とは、「消費者としての自覚を促し、消費者被害を防ぐための情報提供、教育」などと説明されますが、端的に表現すると「賢い消費者を育てよう」ということです。

 近年の経済のグローバル化やネット社会の進展などにより、私たち消費者の選択肢は飛躍的な広がりを見せています。しかし、その一方で、悪質商法などによる消費者被害は後を絶ちません。このような状況を踏まえ、消費者被害などに巻き込まれないような自立した消費者(賢い消費者)を育てて行こうというものです。

 この消費者教育について、保険業界では、保険商品・サービスは金融の一部であることから、金融経済教育とも称されます。昨今の社会環境の急速な変化にともない、私たちを取り巻くリスクもまた多様化・複雑化するなか、私たちが生涯にわたり、より安心・安全な暮らしを送るためには、保険との関わりを持つことは不可避な状況にあります。このことから、消費者が自らのリスクを正しく認識するとともに、そのリスクをカバーするため、適切な保険商品・サービスを利用選択できる知識・判断力、いわゆる「保険リテラシー」を身に付けていくことは重要です。

 ただし、「消費者が適切な保険商品・サービスを利用選択することができる」、これは本来、保険会社の本業である保険募集において、消費者に適切な情報提供などを通じて成し得ていくものではありますが、一方で消費者がこれらの情報を十分に理解するためには、裏打ちとなる様々な知識が必要となります。このことから、例えば「保険はなぜ必要なのか」「保険はどのようなリスクをカバーするのか」などの保険の基礎的知識に関する金融経済教育をより一層充実させ、「賢い消費者」を育てる取り組みが求められているわけです。

 そして、この取り組みは、基礎的知識であるがゆえに、利益・メリットなどを特段求めるものではなく、消費者を取り巻く各ステークホルダー(業界団体、保険会社、労働組合など)が社会貢献などの観点から取り組むべきものではないかと思います。組織としての社会的責任を定めたISO26000において、中核課題の一つに消費者課題(消費者教育など)を掲げていることは、まさにその証左であり、今後、各ステークホルダーからの消費者への教育機会の提供は増えていくことでしょう。このことから、もし、みなさんが、このような機会に出会うことがあれば、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

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