「 英国の保険会社を買収するということの意味 」

                              日本損害保険協会

                              常任監事 久山 大典

 

先日大手損害保険会社が英国の有力保険会社を買収との記事が日経新聞1面に載った。1,000億円の投資とのことである。日本の保険会社が保険の生まれた国で今なお世界の保険のお膝元である英国の保険会社を買収するという話しは、私が損害保険業界に入った1970年代には考えられなかったことである。英国では既に他の日本の業界大手社がロイズの有力シンジケートを買収しているし、米国でもその会社は数千億円の買収を行い、数千人規模の保険会社経営を行っている。既にアジアでは大手保険会社は軒並み損害保険のみならず生命保険も含めて大きなオペレーションを行っている。やっと日本の保険業界も本格的な国際化時代を迎えたようだ。

日本の損害保険会社の国際化は日系企業の海外進出と共に始まったが、当初の国際化はあくまで日系企業の損害保険支援が中心であった。高度成長期に海外に進出した日系企業が海外の保険マーケットで保険の手配に苦慮する中で、日本流のきめ細かいサービスを海外で提供することにより保険業務の国際化を進めてきた。しかしその国際化はあくまで日本の保険会社の延長線上にあり、海外の、特に欧米のマーケットで日本の保険会社がその存在感を示すことが出来るようなものではなかった。

その後海外進出した日系企業がグローバル化し、保険支援に日本流が必ずしも求められなくなってくる中で、日本の保険会社の国際化は方向転換を迫られることになった。

また、国内の損害保険マーケットの事業環境が大きく変化する中で、保険業界は新たな成長戦略を描く必要にも迫られた。

保険はそもそも大数の法則で成り立つ事業である。保険引受を国際化し地理的にもリスク的にも多様化させることは保険事業の安定に資するものである。そういった意味でも損害保険業界の本格的な国際化は大いに歓迎されてよい。

損害保険会社のOBとして、また業界団体で働くものとして日本の保険会社の海外での大いなる飛躍を期待している。

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