リスク社会と保険社会

              産經新聞社               

 編集委員 小林 隆太郎

 

 

  国民の関心が「安全・安心」に対して高まるようになったのはいつ頃のことだろうか。 食品などの消費期限、賞味期限に関心が高まって以来だろうか。あるいはJR西日本の福知山線での列車事故あたりからからだろうか。東日本大震災・東電福島原発事故は決定的だったかもしれない。
 経団連の関係組織である経済広報センターがこのほどまとめた「生活者の〝企業観〟 に関するアンケート調査」によると、企業の果たす役割や責任として最も重要度が高いのは何か、という質問に「安全・安心で優れた商品・サービス・技術を適切な価格で提供すること」という答えが8割と一番だったことが明らかになった。企業が消費者から信頼を獲得する一番のポイントが「安全・安心」であることが強調されている。
   多様化した社会でもやはり求められるのは「安全・安心」であるのだろう。特に現代はリスク社会であり、生活に多くのリスクが存在する。それは生活が多様化したことからでもあるが、それだけに安全・安心は国民が求める最大関心事なのだ。健康も意識して自転車通勤などが普及したが、自転車事故が多発するようになった。ペット社会で、 ペットのけがや病気に対する心配が増大している、もちろん大地震や大災害への懸 念も 強まっている。これらへの保険も契約者が増えているという。
   リスク増大社会というのは「保険社会」ということでもあろう。 保険会社にとってはまさに「ビジネスチャンス」の到来でもある。

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