保険のアグリゲータービジネス

SBIホールディングス

(慶應義塾大学商学部

堀田ゼミ4期生)

日吉 浩之

 

 保険のアグリゲーター(Aggregator)ビジネスというものを耳にしたことはありますでしょうか。“アグリ”という単語を見て「アグリカルチャー(Agriculture)と関係あるのかな?」と思われた方。正解です。このアグリゲータービジネスというものは、集客ビジネスとも言われております。様々な広告媒体から保険商品に関心がある方を集客して、保険商品の募集を行う保険会社や代理店にその情報を伝達するビジネスです。農業で例えると“農家が作った食物をレストランに納品して、対価を得る。”というようなビジネスです。

 私はインターネット上における、リード(Lead)ビジネス型のアグリゲータービジネスに携わっております。俗に言う一括見積もりサイトというものです。一括見積もりサイトには2つのビジネスモデルに分かれ、1つはリードビジネス、もう一つは代理店ビジネスです。リードビジネスとは情報を伝達することによって対価を得、代理店ビジネスは保険契約を獲得することによって対価を得るビジネスです。

 アグリゲーターとして保険商品の募集を行う保険会社や代理店と長期間にわたる取組の中でとても大切だなと感じていることがあります。保険販売において、人の気持ちが入ったタイミングがとても重要だと。

 例えばペット保険。加入のタイミングは、ペットが新たに家族として迎え入れたタイミングと言われております。何故でしょうか?ペットが我が家の家族になった瞬間、飼い主の気持ちは昂ぶります。ペットも守るべき存在になったからです。ここがまさに“人の気持ちが入ったタイミング”となります。このタイミングに保険加入についても、非常に前向きに検討するのです。しかし、ペットは人間と違って、成長するにつれて出来るようになることは限られており、飼い主の次の気持ちの昂ぶりというものがなかなか訪れないようです。次に大きな気持ちの昂ぶりがくるのが、病気などにより経済的な支出があったときと考えられております。ただ、病気をしてからでは保険の加入は難しく、結局は最初の検討タイミングを逃すと、無保険の状態で過ごさざるをえなくなる場合が多いようです。

 これは人間にも当てはまることで、ライフステージにおける変化の度に、気持ちの昂ぶりが発生します。子供の教育資金と保障を備えた学資保険は、子供が0歳・1歳の時に加入される方が最も多いようです。保険加入にはまさにタイミングというものがあります。

 もう一方で考えなくてはならないのが、保険に対する“無知”、そして、お金に関わる知識の“無知”です。先日、慶應義塾大学の堀田ゼミの授業において学生に対し、このような質問をさせて頂きました。

 

「幼稚園から高校まで全て公立校で15年間過ごした場合の学習費総額はいくら!?」

 

想定通り正解は得られませんでした。500万円と言われております。


文部科学省:平成24年度子供の学習費調査より

 

慶應義塾大学に入学するほどの学力を持った学生ですら、正解を導き出すことができないのです。この無知が、保険加入の考えるタイミングを逃し、また本人に必要な保険商品を選べないという事態に導いてしまうのです。保険・お金のことは、FPなどの専門家に頼れば良いという考えもありますが、社会に出る前に最低限の知識・情報を身につける場があると、より豊かな生活を送れるのではないでしょうか。

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